GRACE JOURNAL | グレイスジャーナル
755nmピコ秒レーザー 国際エキスパートミーティング 参加報告
この記事の要点
同じレーザーを使っても、治療結果は同じとは限りません。結果を左右するのは、機器そのものではなく、その肌をどう診て、どのような判断で治療を組み立てるかという医師の診断力です。
先日、私は755nmピコ秒レーザーの国際エキスパートミーティングに、日本から唯一の医師として招待されました。世界を代表するレーザー医たちが、一台の機器について何時間も議論していたテーマは、機器の性能だけではありません。患者さん一人ひとりの肌をどう診て、どのような判断で治療するか。その「診る力」でした。
はじめに
国内外の学会や講演会で、多くの先生方からいただく質問があります。
「どのレーザーを選べばよいのでしょうか。」
美容医療では、機器選びはもちろん重要です。しかし、それ以上に治療結果を左右するのは、その肌をどう診て、どのような根拠をもとに治療を組み立てるかという医師の診断力です。
先日、私は755nmピコ秒レーザーの国際エキスパートミーティングに、日本から唯一の医師として参加しました。そこで交わされていたのは、まさに冒頭の質問への答えでした。
1. 世界の第一人者が議論していたのは「診る力」
レーザーは、誰が使っても同じ結果になる機器ではありません。同じ機器でも、
- どの出力で照射するのか。
- どの順番で治療するのか。
- どこまで反応を引き出すのか。
- どこで止めるのか。
その判断によって、効果も安全性も大きく変わります。今回の会議で議論されていたのも、まさにその「判断」の部分でした。
教科書に書かれている知識ではありません。世界中の第一人者が、それぞれの診療で積み重ねてきた経験を持ち寄り、「なぜ、その判断をしたのか」を議論していく。私は、この時間に最も価値があると感じています。
優れた機器だけでは、優れた結果は生まれません。その機器を、患者さん一人ひとりの肌に合わせてどう使いこなすか。世界の第一人者たちが、その一点について何時間も議論しているという事実こそ、美容医療の本質を物語っています。
今回ご一緒した先生方
今回のエキスパートミーティングには、レーザー皮膚医療を長年牽引してきた世界の専門家が参加していました。議論の内容は公開できませんが、ご一緒した先生方をご紹介します。
Roy G. Geronemus 医師
Roy G. Geronemus, MD
Laser & Skin Surgery Center of New York(米国・ニューヨーク)
Emil A. Tanghetti 医師
Emil A. Tanghetti, MD
Center for Dermatology and Laser Surgery(米国・サクラメント)
Mathew M. Avram 医師
Mathew M. Avram, MD, JD
Massachusetts General Hospital / Harvard Medical School(米国・ボストン)
Douglas C. Wu 医師
Douglas C. Wu, MD, PhD
Cosmetic Laser Dermatology(米国・サンディエゴ)
Sean T. Doherty 医師
Sean T. Doherty, MD, FACS
Boston Center for Plastic Surgery(米国・ボストン)
奥 謙太郎
Kentaro Oku, MD
HILLS GRACE CLINIC(日本・横浜)
2. なぜ日本から参加したのか
私はこれまで、755nmピコ秒レーザー「PicoSure Pro」の開発に携わり、国内外で講演や実技指導を行ってきました。しかし、今回評価していただいたのは、それだけではないと思っています。
私が日々向き合っているのは、日本人をはじめとするアジア人の肌です。アジア人の肌は、欧米人の肌とは炎症反応や色素反応が異なります。同じ設定で照射すれば、炎症後色素沈着(PIH)を起こしやすくなることがあります。
私が追求してきたのは、炎症を最小限に抑えながら、確かな結果を積み重ねる治療です。その積み重ねが、世界の議論の中でも一つの視点として評価されたのだと思います。
3. 私がレーザーより先に診ているもの
レーザー治療では、「どれくらい強く照射するか」が注目されがちです。しかし私が最初に診ているのは、肌そのものの状態です。
- 慢性的な炎症は残っていないか。
- メラノサイト(肌の色をつくる色素細胞)は過敏になっていないか。
- 真皮は治療を受け入れられる状態にあるか。
ここを見誤ると、一度色素が薄くなっても、炎症後色素沈着として再び目立ってしまうことがあります。だから私は、色素だけを見るのではなく、肌全体の環境を整えることを重視しています。
この考え方は、2025年にJournal of Cosmetic Dermatologyへ掲載されたCrossTALK® protocol(DOI: 10.1111/jocd.70485)でも中心となるコンセプトの一つです。
真皮環境を整えながら治療する。一見すると遠回りに思えるかもしれません。しかし、アジア人の肌では、この積み重ねが安全で、再現性の高い治療につながると考えています。
4. 世界の議論を、目の前の一人へ
私たち美容医療に携わる医師には、自分自身の経験だけでなく、世界中で積み重ねられた知見を学び、それを患者さんへ還元する責任があります。だから私は、海外で交わされる議論に参加し続けています。
世界で交わされる議論は、いつも「より安全に、より確かな結果を届けるにはどうすればよいか」という一点に集約されます。私もその議論に参加し、新しい知見を持ち帰り、日本人の肌に合わせて診療へ生かす。その積み重ねが、目の前の一人ひとりの治療につながっています。
同じレーザーでも、診る力が結果を決めます。
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よくある質問
院長はどんなレーザーを専門にしているのですか?
ピコ秒レーザーをはじめとするエネルギーデバイス(EBD/熱や光などのエネルギーを使う治療機器)を専門にしています。ピコ秒レーザー「PicoSure Pro」の開発に携わり、国内外の医師への指導・講演、国際医学誌への論文発表も続けています。
海外で評価されている治療は、日本人の肌にもそのまま合うのですか?
そのままでは合わないことが多い、というのが私の実感です。欧米のデータをアジア人の肌に合わせて読み替える作業が必要で、その読み替えこそ私が最も力を入れている部分です。海外の議論を持ち帰りつつ、日本人の肌に合わせて設定を組み替えてご提案しています。
レーザー治療のクリニックは、何を基準に選べばよいですか?
機器の名前だけで選ばないことをおすすめします。同じ機器でも、当てる医師の判断で結果は変わります。その医師がどれだけ使い込み、どんな考えで強さや止めどきを決めているかを見ていただくと、選び方は変わります。
ピコ秒レーザーはシミに必ず効きますか?
効果の感じ方には個人差があります。シミやくすみの種類・肌の状態によって、適する治療も回数も変わります。かえって色素が濃くなる炎症後色素沈着(PIH)を避けるためにも、まずは肌の状態を診たうえで、適した進め方をご相談しています。
治療をご検討の方へ
- 効果の程度や持続期間には個人差があります。すべての方に同じ結果が得られることを保証するものではありません。
- ピコ秒レーザーによる色素治療では、治療後に一時的な赤み・かさぶた・色素の一時的な濃さ・炎症後色素沈着(PIH)などが生じることがあります。程度や続く期間には個人差があります。
- 肌の状態や体質、日焼けの有無などによっては、治療を受けられない場合や、時期を調整する場合があります。診察時に必ずご相談ください。
- 本記事で紹介した治療は自由診療(健康保険が適用されない治療)です。費用はカウンセリング時にご案内しています。
- 本記事は、医療者向けの非公開の専門家会議に参加した報告です。討議の具体的な内容は非公開のため記載していません。特定の機器の効果を保証したり、機器間の優劣を示したりするものではありません。記事中の機器名は各社の商標または登録商標です。
- 掲載している参加医師の氏名・所属・写真は、各医師の公開情報にもとづいて紹介しています。








