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強さより、順番。繊細な肌に必要な治療の考え方 ― IMCAS ASIA 2026 招待講演報告
この記事の要点
2026年6月19日からタイ・バンコクで開催された世界最大級の美容医療学会「IMCAS ASIA 2026」に、座長のDr. Atchima、Dr. Ohからご依頼をいただき、招待講演を行いました。
テーマは「繊細なアジア人の肌にこそ必要な治療の考え方」。レーザーなどのエネルギー治療で思った結果が出ないとき、その多くは機器や出力の問題ではなく、肌にエネルギーを受け入れる準備ができていないことが原因です。この記事では、講演でお話しした当院のCrossTALK® protocol:SKIN PRIMING(スキンプライミング=肌の環境を整える治療)の考え方をご紹介します。
はじめに
2026年6月19日から21日にかけて、タイ・バンコクのThe Athenee Hotelで「IMCAS ASIA 2026」が開催されました。IMCASは皮膚科・形成外科・美容医療の分野で世界最大級の国際学会で、今回はタイ美容皮膚科学会(THAICOSDERM)の学術大会ITCAM(第19回)との共同開催です。
私はこの学会で、セッション座長を務められたDr. Atchima、Dr. Ohから直接のご依頼をいただき、アジア人の肌の治療についての招待講演を行いました。与えられたテーマを一言でいえば、「繊細な肌にこそ必要な治療法とは何か」。今回はその講演の内容をご紹介します。「治療を受けたのに、思っていた効果が出ない」と感じてこられた方にこそ、知っていただきたい考え方です。
1. 「効かない」の始まりにある、三つの思い込み
機器を使う治療で犯しがちなミスには、共通のパターンがあります。
- 「強く使えば、より良い効果が得られるだろう」
- 「新しい機器を使えば、うまくいくだろう」
- 「繰り返せば、いつか効果が出るだろう」
私はこれまで、国内外の医師や患者さんから「思っていた効果が出ない」というご相談を数多く受けてきましたが、その始まりをたどると、多くがこの三つのどれかに行き着きます。
残念ながら、この三つの発想は前提条件が整っていないため、良い結果には結びつきません。さらに問題なのは、症状をかえって悪化させてしまう可能性が高いということです。

では、なぜエネルギーを強くしても、新しい機器を使っても、治療を繰り返しても、良い結果を得られないのでしょうか。答えは非常にシンプルです。
「肌に、エネルギーを受け入れる準備ができていないから」――これに尽きます。
2. 症状のある肌は、そもそも「弱っている」
私たちの肌は、ストレス、加齢、紫外線、そして可視光線やブルーライト(パソコンやスマートフォンの光)によって、日々ダメージを受けています。シミやシワ、毛穴の開き、乾燥といった症状は、その積み重ねの結果として現れたものです。

つまり、症状のある肌は「ダメージがあったから」その症状が出ているのであり、そもそも弱っている状態だといえます。肌のハリやうるおいを支える中心的な細胞であるfibroblast(線維芽細胞:コラーゲンなどを作り出す真皮の細胞)も同じように弱っており、上手に起こさない限り、こちらの思うようには働いてくれません。

熱を与えるだけでは、線維芽細胞は起きない
デバイス治療の多くは、大きな視点でとらえれば「肌に熱を与える」治療です。しかし、弱った線維芽細胞は、熱だけを与えられても十分に起き上がることができません。それどころか、熱が単なるダメージとして働いてしまうことも多いのです。

「治療を受けたのに、かえって毛穴が広がってしまった」「赤みがなかなか引かなくなった」「色素沈着が起きてしまった」――こうした副反応の背景には、準備の整っていない肌に大きなエネルギーが加わったという構図が隠れているケースが少なくありません。

3. 線維芽細胞の「環境」を整える ― CrossTALK® protocol
そこで重要になるのが、線維芽細胞が働ける環境を先に整えるという考え方です。

長年ダメージを受けてきた肌では、コラーゲンが壊れ、線維芽細胞が十分に活動できる足場が保てなくなっています。そこで、まず架橋型ヒアルロン酸(分解されにくい構造にしたヒアルロン酸)によって線維芽細胞が動きやすい環境を作り、そのうえでエネルギーを与える。この二段階のステップを踏むことが重要になります。

当院ではこの方法をCrossTALK® protocol:SKIN PRIMING(スキンプライミング=肌の環境を整える治療)として体系化し、日常の診療に用いています。この治療法の効果と安全性は国際医学誌に論文として発表しており(Journal of Cosmetic Dermatology, 2025, DOI: 10.1111/jocd.70485)、科学的根拠を持つ治療法として国際的な場で報告しています。

単独でも、組み合わせでも
この方法は単独でも、肝斑やくすみの落ち着き、毛穴の引き締まり、うるおいやハリの向上、赤みや乾燥の起きにくさといった、肌質そのものの変化が期待できます(効果には個人差があります)。
さらにこの方法が力を発揮するのは、レーザーのような他の治療と組み合わせる場合です。CrossTALK®によって肌の準備が整うと、レーザーのエネルギーは「不要なシミの色素には集中して働きかけながら、周囲の組織への負担は抑える」方向で使えるようになります。エネルギーを「攻撃」ではなく「回復のきっかけ」として使える状態を、先に作っておくということです。

4. 繊細なアジアの肌にこそ、「準備」が要る
日本人を含むアジア人の肌は、メラニンの反応性が高く、ダメージに対する反応が予測しづらい、繊細な肌です。
その肌に対して、何の準備もしないままレーザー・高周波・超音波のような大きなエネルギーを使ったり、ニードル(針)を繰り返し使って傷をつけたりする施術は、本来あまり向いていません。しっかりと肌の環境を整え、エネルギーや刺激をポジティブに使える状態にしてから治療する。この順番こそが、講演のテーマである「繊細な肌にこそ必要な治療法」の核心です。


5. 講演を終えて
今回のセッションでは、パネルディスカッションにも参加し、アジア各国の先生方と「アジア人の肌をどう守りながら治療するか」について議論を交わしました。エネルギーの強さや機器の新しさを競う時代から、肌の環境を読み、整えてから治療する時代へ。この流れが世界の第一線で共有されつつあることを、会場で実感しました。
CrossTALK® protocolは、それ単独でも、組み合わせでも力を発揮し、続く治療の効果を高めながら副反応のリスクを減らすことが期待できる方法です(効果には個人差があります)。

エネルギーを「負担」にするか「回復のきっかけ」にするかは、治療の前の準備で決まります。
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よくある質問
スキンプライミング(CrossTALK® protocol)とは、どんな治療ですか?
架橋型ヒアルロン酸で線維芽細胞(コラーゲンを作る肌の細胞)が働きやすい環境を先に整え、そのうえでエネルギー治療を行う二段階の治療です。肌の環境そのものを整えることで、単独でも肌質の変化が期待でき、後に続くレーザーなどの治療の土台にもなります。効果には個人差があります。
レーザー治療の前に、必ず受ける必要がありますか?
すべての方に必要というわけではありません。肌のダメージの程度や治療の目的によって、順番と組み合わせは変わります。診察でお一人おひとりの肌の状態を拝見したうえで、準備が必要かどうかを含めてご提案しています。
レーザーを受けたのに効果が出なかったのですが、なぜでしょうか?
機器や出力の問題だけでなく、肌側にエネルギーを受け入れる準備が整っていなかった可能性があります。ダメージの蓄積した肌では、エネルギーが効果ではなく負担として働いてしまうことがあるためです。これまでの治療歴を含めて、診察時にご相談ください。
治療をご検討の方へ
- 効果の程度や持続期間には個人差があります。すべての方に同じ結果が得られることを保証するものではありません。
- 注入を伴う治療では、内出血・腫れ・赤み・痛みなどが一時的に生じることがあります。程度や続く期間には個人差があります。
- 本記事で紹介した治療は自由診療(健康保険が適用されない治療)です。費用はカウンセリング時にご案内しています。
- 治療に用いる製剤・機器や組み合わせは、診察のうえで肌の状態に応じて判断します。妊娠中・授乳中の方など、治療を受けられない場合がありますので、診察時に必ずご申告ください。
- 記事中の写真は国際学会での講演風景です。医療者向けの講演内容を、患者さんに向けて分かりやすく再構成しています。
「治療を受けたのに、思った効果が出なかった」というご経験のある方は、横浜あざみ野のヒルズグレイスクリニックまでご相談ください。
肌の状態を診たうえで、いま必要なのは治療そのものか、それとも「準備」なのかからご説明します。
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