夜の洗面所。化粧水を手のひらにとって、頬に。もう一度、首に。
「今日はよくのびる」「今日は少し、ごわつく」。肌のことは、それくらいの解像度で毎日見ています。
けれど、今日ソファから立ち上がるときに「よいしょ」と声が出たこと。あれを肌の話だと思った方は、たぶん、いません。
この記事の要点
更年期にハリが落ちるのは、肌だけではありません。肌のコラーゲンと筋肉は、同じ時期に、同じ原因で減っていきます。41〜59歳の日本人女性56人の研究で、真皮を厚くしたのは筋トレだけでした。ただ、この話は「筋トレを頑張りましょう」では終わりません。続かない、から本題が始まります。
1|16週間後、変わったのは体重ではなく、肌の厚みだった
その「よいしょ」を、肌の話として調べた研究があります。
立命館大学とPOLA化成工業の研究グループが、こんな研究を行っています。対象は、運動習慣のない41〜59歳の日本人女性56人。全員を2つのグループに分け、16週間にわたって、週2回、トレーナーの見守りのもとで運動をしてもらいました。
片方のグループは有酸素運動(自転車こぎ)、もう片方は筋トレ。回数にすると、16週間で計32回。カレンダーに印をつけるなら、たった32個です。

16週間後。研究チームが測ったのは体重でも、見た目年齢でもありませんでした。皮膚の弾力、真皮の構造、そして真皮の厚みです。
真皮というのは、肌の土台にあたる層です。いちばん外側の表皮(厚さおよそ0.2mm)の下にあって、コラーゲンやヒアルロン酸などが編み目のように詰まっています。押したときに指を押し返してくる、あの感触をつくっているのは、この真皮です。ベッドにたとえるなら、表皮がシーツ、真皮がマットレス。年齢とともに薄くなるのは、下のほうです。

結果は、こうでした。肌の弾力と上層真皮の構造は、有酸素運動でも筋トレでも改善しました。体を動かすこと自体に、意味があったということです。
ただし、ひとつだけ差がつきました。真皮の厚みが増えたのは、筋トレのグループだけ。同じグループでは、筋肉を含む除脂肪量も1.2%増えていました。マットレスの中身が、少し厚くなった。そう考えると分かりやすいと思います。
Nishikori S, Yasuda J, Murata K, et al. Resistance training rejuvenates aging skin by reducing circulating inflammatory factors and enhancing dermal extracellular matrices. Sci Rep. 2023;13:10214.(41〜59歳の日本人女性・有酸素運動群26名/筋トレ群30名・16週間/週2回。論文全文)
同じ16週間、同じ週2回。違ったのは、体に何を求めたかだけでした。
2|筋肉は、体でいちばん大きな「手紙の発信所」

なぜ、お腹やお尻の筋肉を動かすことが、顔の肌に関係するのでしょうか。
鍵は、筋肉が「動かすための組織」であると同時に、「出す組織」でもあることです。筋肉が縮むとき、体のあちこちへ情報を伝える物質が分泌されます。これらをまとめてマイオカインと呼びます。
Pedersen BK, Febbraio MA. Muscles, exercise and obesity: skeletal muscle as a secretory organ. Nat Rev Endocrinol. 2012;8(8):457-465.
手紙にたとえると分かりやすいかもしれません。筋肉を動かすたびに、体じゅうへ手紙が投函される。運んでいるのは、血液という宅配便。その宛先のひとつが、真皮でコラーゲンなどをつくっている線維芽細胞です。
先ほどの研究では、参加者の運動後の血液成分を使って線維芽細胞を培養する実験も行われています。すると、真皮の材料をつくる遺伝子の働きが高まったと報告されました。筋トレのグループでは、真皮を支えるビグリカン(コラーゲンのすき間を埋め、組織を安定させるタンパク質)も増えています。
マウスを含む研究では、運動で増えるIL-15という物質が、皮膚のミトコンドリア(細胞のエネルギー工場)の働きに関わることも示されました。
Crane JD, MacNeil LG, Lally JS, et al. Exercise-stimulated interleukin-15 is controlled by AMPK and regulates skin metabolism and aging. Aging Cell. 2015;14(4):625-634.(ヒトとマウスを含む研究)
塗るのではなく、届けている。運動が「内側からのスキンケア」と呼ばれるのは、このためです。
これは現時点で考えられている仕組みです。マイオカインが増えれば必ず肌が変わる、という意味ではありません。肌の状態には、睡眠、栄養、紫外線、ストレス、持病や内服薬など、多くの要因が同時に関わっています。
3|「急にケアが効かなくなった」は、気のせいではない

40代後半から50代にかけて、「同じケアを続けているのに、追いつかなくなった」とおっしゃる方がとても多くいらっしゃいます。これは、感覚の問題ではありません。
皮膚のコラーゲン量は、実年齢よりも「閉経からの年数」と関係して減ることが、1980年代から報告されています。つまり、肌の変化のスピードを決めているのは、ホルモンです。
Brincat M, Moniz CF, Studd JW, et al. Long-term effects of the menopause and sex hormones on skin thickness. Br J Obstet Gynaecol. 1985;92(3):256-259.
そして同じ時期、筋肉にも同じことが起きています。エストロゲンの低下は、筋肉の量だけでなく、筋肉の質(発揮できる力)にも影響することが示されています。
Collins BC, Laakkonen EK, Lowe DA. Aging of the musculoskeletal system: How the loss of estrogen impacts muscle strength. Bone. 2019;123:137-144.

肌が変わる。体力が落ちる。動くのがおっくうになる。動かないから、筋肉がさらに減る。この時期に起きているのは、別々の出来事ではなく、ひとつづきの変化です。
ですから、どうか覚えておいてください。頑張りが足りないのではありません。同じ時期に、同じ原因で、二つが同時に起きているだけです。
なお、強い疲労感、動悸、めまい、関節の痛み、不眠、急な体重変化などがある場合は、美容医療だけで判断せず、婦人科やかかりつけの内科にご相談ください。更年期の症状そのものに対する治療という選択肢もあります。
4|わかっている。でも、続かない

ここまで読んで、こう思われた方がいらっしゃると思います。
「運動がいいのは、わかっている。それができないから、困っているんです」
その通りだと思います。診察室でも、本当によく伺います。膝や腰が気になる。夕方には体力が残っていない。仕事と家のことで、自分の時間が最後に回る。ジムに申し込んだけれど、3回で行かなくなった。
続かないのは、意志の問題ではなく、条件の問題です。そして更年期は、その条件がいちばん厳しくなる時期でもあります。疲れやすいから動けない。動けないから筋肉が減る。減るからさらに疲れやすい。
この輪のどこかに、外から一度だけ力を貸せる場所があるとしたら。自分で動かすのが難しいなら、動かしてもらう。そういう選択肢が、美容医療の側にあります。
5|スティムシュア ― 横になったまま、筋肉に「動け」と伝える
ベッドに横になって、20分。本を1章読み終えるくらいの時間です。その間に、装着した部位の筋肉にはおよそ24,000回の「動け」という合図が届きます。それがスティムシュアという治療です。

何が起きているのか
スティムシュアは、高エネルギー電磁誘導(High Energy Electromagnetic Inductive Device)と呼ばれる仕組みの医療機器です。電磁的な刺激で、装着した部位の筋肉に収縮と弛緩をくり返させます。自分の意思で力を入れるのではなく、外から合図が届く形です。
もうひとつの特徴は、遅筋と速筋の両方に働きかけることです。遅筋はマラソン選手の筋肉、速筋は短距離走者の筋肉です。ひとつの施術サイクルの中で、段階を分けてこの両方に合図を送ります。自力のトレーニングで、長距離と短距離を20分で両方こなすのは簡単ではありません。
ご相談いただける部位
当院でご案内しているのは、次の3つの部位です。

そのほかの部位についてご希望がある場合は、診察でご相談ください。適しているかどうかを含めてお答えします。
尿もれが気になる場合、骨盤底筋への刺激が適しているかを診察で確認します。ただし、症状の原因はさまざまです。必要に応じて婦人科・泌尿器科へのご相談もおすすめしています。
体調や関節の状態、時間の事情で運動が難しいときにも、横になったまま筋肉を動かすきっかけをつくれる。それがスティムシュアの役割です。運動の代わりというより、運動へ戻るための足がかりになる治療です。
なお、この記事でご紹介した肌の研究は運動についての研究で、スティムシュアの肌への効果を直接調べたものではありません。肌の治療と筋肉のケアを、それぞれの目的に合わせて考えることが大切です。
変化は、静かに始まります。臨床試験では、変化を感じられるまで平均8週間程度と示されています。1回で完結する治療ではなく、回数を重ねる前提の治療です。感じ方には個人差があります。
スティムシュアが担うのは、筋肉のケアです。そして筋肉を落とさないことが——この記事で見てきたとおり——肌の土台を支える体の条件を整えていきます。

費用
1回
1部位
33,000円
4回チケット
1回・1部位
22,000円
(88,000円)
半年以内有効
8回チケット
1回・1部位
16,500円
(132,000円)
半年以内有効
自由診療(保険適用外)です。表示は当院公式サイトの料金表に基づきます。料金は変更される場合がありますので、最新の料金・適応・回数は公式サイトの料金表および診察でご確認ください。
国内未承認医療機器に関する情報開示
受けられない方・注意していただきたいこと
- 体内に磁性体(心臓ペースメーカー、除細動器、人工内耳、可動型義眼、インスリンポンプ、神経刺激装置、人工股関節など)をお持ちの方は施術を受けられません。
- 生理中・妊娠中の方、1週間以内に他機器による部分痩身や類似の施術を受けられた方も施術を受けられません。
- 施術後に、頭痛、筋肉痛、違和感、一時的な筋の収縮(有痛性筋痙攣/筋クランプ)がみられることがあります。多くは時間の経過とともに改善しますが、強い症状や続く症状がある場合は医療機関へご相談ください。
- 体内の医療機器・金属、持病、内服薬、妊娠の可能性については、必ず事前にお申し出ください。
6|スティムシュアと、ご自宅でできる3つのこと

筋肉のケアは、クリニックの中だけで完結するものではありません。ここからは、ご自宅でできる3つの習慣です。
32個の印は、ご自宅の分。横になったままの20分は、クリニックの分。どちらから始めても、向かう先は同じです。筋肉を、落とさないこと。
よくある質問
筋トレをすれば、誰でも肌がきれいになりますか?
いいえ。ご紹介した研究では、16週間で肌の弾力・上層真皮の構造・真皮の厚みに変化が見られましたが、すべての方に同じ結果が出ることを保証するものではありません。肌の状態には、年齢、体調、睡眠、栄養、紫外線、持病や内服薬など多くの要因が関わります。
スティムシュアを受ければ、論文と同じ変化が肌に起こりますか?
いいえ。この論文は運動の研究であり、スティムシュアの肌への効果を検証したものではありません。スティムシュアは装着した部位の筋収縮を補助する治療で、運動のすべての効果を再現するものではありません。この線引きは、診察でも必ずお伝えしています。
何回くらい受ける必要がありますか?
1回で完結する治療ではありません。臨床試験では、筋質・筋量の変化を感じられるまでに平均8週間程度を要すると示されています。当院のモニター価格の条件が「週1回・計8回」であることからも分かるように、一定の回数を重ねる前提の治療です。実際の回数と部位は、体調・目的・ご予算を伺ったうえで診察でご提案します。
施術は痛いですか。当日はそのまま帰れますか?
照射部の筋肉が収縮と弛緩をくり返します。開始から2分ほどで収縮が強くなり、数秒間維持されます。強度は調整できますので、強い痛みを感じた場合は必ずその場でスタッフにお伝えください。施術後はそのまま日常生活にお戻りいただけます。激しい運動の後のような感覚が残ることがあります。
更年期で疲れやすいのですが、筋トレを始めても大丈夫ですか?
体調によります。強い疲労感、動悸、めまい、関節の痛み、不眠などがある場合は、無理に始めず、婦人科やかかりつけ医にご相談ください。始める場合も、軽い負荷から段階的に行ってください。この記事の「今日からできる3つのこと」は、いずれも特別な準備なく始められる範囲のものです。
受けられない場合はありますか?
あります。体内に磁性体(心臓ペースメーカー、除細動器、人工内耳、可動型義眼、インスリンポンプ、神経刺激装置、人工股関節など)をお持ちの方、生理中・妊娠中の方、1週間以内に他機器による部分痩身や類似施術を受けられた方は施術を受けられません。ご不明な場合は、ご予約前にお問い合わせいただいて構いません。
RESEARCH NOTE
出典と研究について
本記事の中心となる研究は、立命館大学とPOLA化成工業の共同研究です。運動習慣のない41〜59歳の日本人女性を対象に、16週間の有酸素運動またはレジスタンストレーニング(筋トレ)の前後で、肌の特性、血中の因子、培養した真皮線維芽細胞の遺伝子発現を調べています。
この研究は、筋トレによる真皮の厚みの変化と、血中因子・真皮の細胞外マトリックスとの関係を示唆するものです。ただし、著者ら自身が「作用機序を明確に確認するには、より直接的な動物実験が必要である」と述べているとおり、因果関係のすべてが証明されたわけではありません。また、スティムシュアをはじめとする美容医療機器の肌への効果を検証した研究ではありません。
Nishikori S, Yasuda J, Murata K, et al. Resistance training rejuvenates aging skin by reducing circulating inflammatory factors and enhancing dermal extracellular matrices. Scientific Reports. 2023;13:10214. 論文全文 →
Pedersen BK, Febbraio MA. Muscles, exercise and obesity: skeletal muscle as a secretory organ. Nature Reviews Endocrinology. 2012;8(8):457-465.
Crane JD, MacNeil LG, Lally JS, et al. Exercise-stimulated interleukin-15 is controlled by AMPK and regulates skin metabolism and aging. Aging Cell. 2015;14(4):625-634.
Brincat M, Moniz CF, Studd JW, et al. Long-term effects of the menopause and sex hormones on skin thickness. British Journal of Obstetrics and Gynaecology. 1985;92(3):256-259.
Collins BC, Laakkonen EK, Lowe DA. Aging of the musculoskeletal system: How the loss of estrogen impacts muscle strength. Bone. 2019;123:137-144.
スティムシュアの仕様・適応・費用・副反応に関する記載は、ヒルズグレイスクリニック公式サイトのスティムシュア治療ページに基づきます(2026年8月時点)。
TREATMENT INFORMATION
治療について
- 施術名
- スティムシュア(StimSure)
- 診療区分
- 自由診療(保険適用外)
- 使用量・部位
- 腹部・臀部・骨盤底筋など。適応・装着方法は診察で確認します。
- 公式料金の目安
-
1回
1部位
33,000円
4回チケット
1回・1部位
22,000円
(88,000円)
半年以内有効
8回チケット
1回・1部位
16,500円
(132,000円)
半年以内有効
表示は公式料金の目安です。自由診療(保険適用外)です。最新の料金・適応・回数は公式案内および診察でご確認ください。
- 主な副作用・リスク
- 筋肉痛、頭痛、筋痙攣、違和感などが起こることがあります。体調や症状により受けられない場合があります。
- 未承認医療機器に関する事項
- 日本国内で薬機法上の承認を得ていない未承認医療機器です。国内代理店を経由して入手しています。同一の性能を有する国内承認医療機器はありません。米国FDAでは筋肉の強化・引き締めの適応で承認されています。








