結婚式まで3ヶ月|「まず、控えましょう」から、「いってらっしゃい」まで

美容医療は人を幸せにするのか
ヒルズグレイスクリニック 副院長 奥 美香子

監修・執筆:奥 美香子

ヒルズグレイスクリニック 副院長

本記事は、「美容医療は人を幸せにするのか」を考える研究連載の一部です。ここでは、一人の患者様の語りを、見た目・気持ち・行動の変化を考えるための一つの記録として紹介しています。医学と社会学の視点から、患者様の声を丁寧に見つめます。

この記事の要点

結婚式まで3ヶ月というときに受診された患者様の記録です。気にされていたのは、ニキビ跡の色むらと毛穴の目立ち。エステでのお手入れは続けていました。けれど診察で最初にお伝えしたのは、新しい治療ではなく、いま続けているお手入れを一度控えることでした。そこから挙式当日までの3ヶ月を、診療記録とご本人の言葉でたどります。

患者様ご本人の感想を紹介する記事です。治療結果や感じ方には個人差があり、同じ変化を保証するものではありません。

玄関で、「いってらっしゃい」と言った日

最後の施術を終えた患者様を、スタッフが玄関までお見送りしました。

そのとき交わした言葉が、「いってらっしゃい」でした。

行き先は、結婚式です。

見送る側にも、見送られる側にも、涙がありました。クリニックの玄関で交わす挨拶としては、少し変わっているかもしれません。けれど、そこまでの3ヶ月を知っていれば、不思議なことではありませんでした。

3ヶ月前に、巻き戻します。

本文中のイラストは、記事の場面を伝えるためのイメージで、ご本人のお姿を描いたものではありません。本記事では症例写真を使用しておらず、実名、施術日、具体的な施術の内訳も掲載していません。

結婚式まで、あと3ヶ月

副院長 奥 美香子がタブレットで肌のターンオーバー(肌が新しく生まれ変わる流れ)の図を見せながら、初診の患者様に説明している水彩イラスト

初診のとき、患者様が気にされていたのは二つでした。ニキビ跡の色むらと、毛穴の目立ち。

何もしてこなかった方ではありません。むしろ逆でした。エステサロンに通い、お手入れを重ね、できることは続けておられました。

それでも、ご自身が期待していた変化には届かない。残り3ヶ月という時期に、ここへ来られました。

やるべきことを、やってきた方でした。だからこそ、この日の診察でお伝えすることは、簡単ではありませんでした。

最初にお伝えしたのは、「控えましょう」だった

肌を拝見すると、顔全体が乾いていました。そして、ニキビを繰り返していました。

お話を伺うと、2週間に1回のペースでピーリング(薬剤で古い角質を取り除くお手入れ)を続けておられました。

私が最初にお伝えしたのは、新しい治療の名前ではありません。そのピーリングを、いったん控えること。そして、保湿を中心としたケアに切り替えることでした。

肌の表面には、水分を抱え込み、外からの刺激をはね返す薄い層があります。角質と皮脂がつくるこの層を、バリア機能と呼びます。角質を取り除く施術は、肌の状態によっては役に立ちます。けれど短い間隔で繰り返すと、この層が追いつかなくなることがあります。乾いて、刺激に弱くなり、ニキビを繰り返す。そうした循環に入っている可能性がありました。

患者様が自宅の鏡台で、頬にクリームをなじませている水彩イラスト。保湿を中心としたホームケアのイメージ

足すのではなく、まず引く。

残り3ヶ月の方に「やめましょう」と伝えるのは、こちらも気が重いことです。今日から何かが始まると思って来られた方に、今日はむしろ減らしましょう、と言うのですから。

それでも、肌が治療に応えられる状態になっていなければ、その先に何を重ねても、十分な反応は得られません。順番を逆にすると、3ヶ月は足りなくなります。

院内での治療と並行して、ご自宅で使うスキンケアも見直していきました。

ピーリングそのものが肌に良くない、という意味ではありません。適した間隔や強さは、肌の状態によって大きく変わります。同じお手入れでも、合う方と、そのときは控えたほうがよい方がいます。ご自身の肌がどちらなのかは、診察でご確認ください。

「仕方がない」と思っていたことを、相談ごとにした

通院を重ねるうちに、診察室で話す内容が変わっていきました。

生理前になると、決まって肌が荒れる。それを、患者様は相談していいこととは思っておられませんでした。毎月のことで、仕方がないこと。そういう位置づけだったのです。

その話が出たので、肌そのものだけでなく、体の側からも整えることにしました。診察に基づいて、漢方とサプリメントを取り入れました。

変わったのは、処方の内容だけではありません。「これは仕方がない」と分類していたことが、「相談していいこと」の側に移りました。

そして、まだ触れていないことが、一つ残っていました。

手の甲から始めた、最初のレーザー

院長 奥 謙太郎が施術ベッドの脇で、手ぶりを交えて施術の流れを説明している水彩イラスト

レーザー治療を担当したのは、院長の奥 謙太郎です。

患者様は、痛みが苦手な方でした。レーザーと聞くだけで、身構えてしまう。

そこで、いきなり顔には当てませんでした。まず、手の甲に一発。どのくらいの刺激なのかを、ご自身の体で確かめていただいてから、顔に進みます。

院長 奥 謙太郎が患者様の頭側からレーザーを照射している水彩イラスト。医師も患者様も保護用のアイシールドを着用している

「痛みが苦手なのでレーザーは不安でしたが、最初に手の甲に当てて下さり、安心しました。」

手の甲に当てたところで、痛みそのものが消えるわけではありません。消えたのは、何をされるか分からないまま台に横になる、という状態のほうでした。

通院を重ねるなかで、肌の見え方について、ご自身で感じるところがあったと振り返っておられます。

ここで紹介している変化は、ご本人が当時感じられたこととして記録しているものです。客観的な測定値ではなく、治療の効果を示すものでもありません。レーザー治療の反応の出方、必要な回数、ダウンタイムには個人差があります。

肌の話だけでは、終わらなかった3ヶ月

結婚式の準備は、肌を整える時間と、都合よく住み分けてはくれません。

仕事があり、式の準備があり、その両方が同じ時期に重なりました。疲れが抜けず、眠れない日が続いた時期もあります。この時期には、ビタミン・ミネラルを含む点滴もあわせて行いました。

患者様がリクライニングチェアでビタミン・ミネラルを含む点滴を受けている水彩イラスト

ご本人の言葉に出てくるのは、施術の名前ではありませんでした。

「皆さんがいつも親身に相談に乗ってくださるので、安心して頼っていました。一緒になって結婚式を楽しみにしてくださっているのが、とても嬉しかったです。」

クリニックの受付で、スタッフが患者様と笑顔で話している水彩イラスト

肌の調子が気になる日も、準備に追われてどうにもならない日も、来れば話せる場所がある。挙げてくださったのは、治療そのものではなく、結婚式を一緒に楽しみにしているスタッフの姿でした。

3ヶ月のうちに、ここは「施術を受けに行く場所」から、少し違う場所になっていました。

挙式の1週間前に、レーザーを終えた

最後に考えたのは、終わり方でした。

レーザー治療は、挙式の1週間前までに終えました。直前の期間は、導入治療と院内でのお手入れに切り替えています。

レーザーのあとには、赤みが出たり、肌が一時的に敏感になったりすることがあります。当日に向けては、新しい刺激を加える時期ではなく、落ち着かせる時期をとらなければなりません。どこで終えるかを先に決めて、そこから逆算して順番を組みました。

スタッフが患者様の頭側から両手で顔のお手入れをしている水彩イラスト。挙式直前の院内でのケアのイメージ

そして、最後の施術の日が来ました。3ヶ月前、ピーリングを控えるところから始めた時間が、そこで終わりました。

花束を持つ患者様を、院長 奥 謙太郎・副院長 奥 美香子とスタッフが笑顔で囲んでいる水彩イラスト。最後の施術の日のお見送りのイメージ

玄関でお見送りしたのが、冒頭の場面です。

挙式前の治療をいつまでにするかは、施術の内容と肌の状態によって変わります。この患者様の経過であり、すべての方に当てはまる期間ではありません。ご予定が決まっている場合は、その日付を含めて診察でご相談ください。

鏡を見る時間が、楽しみに変わった

挙式当日、ブーケを持って微笑む花嫁を描いた水彩イラスト

通院の最後に、これから結婚式を迎える方へのメッセージを書いてくださいました。挙式を前にした時点での言葉です。

「お肌がキレイになると鏡を見るのが楽しくなります。自信が出るので、式当日も最高の笑顔で迎えられると思います。今しかできない美のお手入れを楽しんでください!」

その後、挙式当日の肌の状態に満足されていたと、ご報告が届きました。

この言葉で、何が変わったのかがはっきりします。

鏡は、3ヶ月前からずっとそこにありました。変わったのは、鏡ではなく、鏡に向かう理由のほうです。気になるところを確かめるために見ていた鏡が、楽しみに見る鏡になった。

悩みを相談しながら過ごした3ヶ月は、肌を整える期間であると同時に、結婚式を迎えるまでの時間そのものにもなっていました。

玄関での「いってらっしゃい」は、その3ヶ月の最後の一言でした。

TREATMENT INFORMATION

今回の治療について

施術名
レーザー治療、導入治療、ホームケア(外用・内服)を組み合わせた、挙式までの肌づくり
診療区分
自由診療(保険適用外)
使用量・部位
顔全体。受診時に継続していたピーリングをいったん控え、保湿を中心としたケアに切り替えたうえで、院内でのレーザー治療と導入治療、ご自宅での外用ケアを組み合わせました。生理周期に伴う肌荒れに対しては、診察に基づいて漢方・サプリメントを併用しています。疲労と睡眠不足が重なった時期に、ビタミン・ミネラルを含む点滴を行った記録があります。本記事では、患者様の特定を避けるため、個別の機器名・製剤名・回数は記載していません。使用する機器、回数、部位は診察で決めます。
経過・アフターケア
レーザー治療の後は、赤み、ほてり、一時的な乾燥や皮むけが出ることがあります。治療期間中は保湿と日焼け対策を続け、自己判断で角質ケアを追加しないようお願いしています。今回は挙式の1週間前までにレーザー治療を終え、直前は導入治療と院内でのお手入れに切り替えました。挙式や撮影など日付の決まったご予定がある場合は、治療を終える時期を逆算して組み立てます。この期間は一例であり、施術内容と肌の状態によって異なります。
公式料金の目安

本記事では、患者様の特定につながるため、実際に受けられた施術の内訳と総額は掲載していません。レーザー治療・導入治療の料金は治療内容ごとに異なります。診察・診断料は初診11,000円(税込)、前回受診から24か月以内の再診は1,100円(税込)です。治療ごとの最新の料金は、下記のクリニック公式の料金案内でご確認ください。麻酔代、外用薬・内服薬の費用は別途かかります。

主な副作用・リスク
レーザー治療では、赤み、腫れ、痛み、点状出血、内出血、水疱、かさぶた、色素沈着・色素脱失、熱傷、瘢痕、感染、アレルギー反応などが起こることがあります。導入治療や外用剤では、刺激感、赤み、かゆみ、乾燥が生じることがあります。漢方・サプリメントなどの内服では、胃腸症状や発疹などが起こることがあります。麻酔クリームを使用した場合、かぶれ、赤み、かゆみなどが生じることがあります。点滴では、刺入部の痛み、内出血、気分不良などが生じることがあります。挙式など日付の決まったご予定がある場合、直前の施術は避ける必要があるため、スケジュールを含めて診察でご相談ください。症状が気になる場合は、自己判断で様子を見続けず、クリニックへご相談ください。
未承認医療機器に関する事項
当院では、国内で承認された医療機器・医薬品と、承認を受けていないものの両方を、治療内容に応じて使用しています。未承認の機器・医薬品を用いる場合は、承認状況、入手経路、国内の同一・類似機器の有無、諸外国での安全性情報を診察時にご説明します。本記事では個別の機器名・製剤名を記載していないため、該当する治療の承認状況は、下記の公式案内および診察でご確認ください。

よくある質問

結婚式まで3ヶ月しかありませんが、間に合いますか?

間に合うかどうかをお約束することはできません。そのうえで、残り3ヶ月で何ができるかは診察でお話しできます。期間によってできることは変わります。残りの期間、肌の状態、ご希望によって、どこから始めるかを診察で決めます。3ヶ月という期間そのものより、何をどの順番で行うかで組み立てが変わります。挙式前は治療を控える期間が必要になるため、実際に治療にあてられるのは残り期間のすべてではありません。日付が決まっている場合は、その日付を含めてご相談ください。

いま続けているエステやセルフケアは、やめたほうがいいのでしょうか?

一律にやめる必要はありません。この患者様の場合は、来院時に乾燥とニキビの繰り返しがあり、短い間隔でのピーリングをいったん控えるご提案をしました。合うかどうかは肌の状態によって変わります。いま行っているお手入れの内容と頻度を、診察でそのままお聞かせください。

痛みが苦手です。レーザー治療は受けられますか?

ご相談いただけます。この患者様には、顔に当てる前に手の甲で刺激を確かめていただきました。麻酔のクリームを使う方法もあります。痛みの感じ方には個人差がありますので、不安な点は施術前にお伝えください。

挙式の何日前まで治療を受けられますか?

施術の内容によって異なります。今回の患者様は、レーザー治療を挙式の1週間前までに終え、直前は導入治療と院内でのお手入れに切り替えました。これは一例であり、すべての方に当てはまる期間ではありません。施術内容とそのときの肌の状態をみて、個別に検討します。

費用はどのくらいかかりますか?

治療内容によって変わります。本記事では、患者様の特定につながるため、実際に受けられた施術の内訳と総額は掲載していません。治療ごとの料金は、クリニック公式の料金案内をご確認ください。診察では、ご予算とご希望の期間をふまえて治療の組み立てをご提案します。

この患者様と同じ変化を期待できますか?

お約束はできません。この記事は、一人の患者様の主観的な語りを紹介するものです。治療結果や感じ方、経過には個人差があります。適応、治療内容、費用、リスクは診察でご確認ください。

結婚式、記念日、撮影。日付が決まっているご相談では、終える時期から逆算して順番を組み立てます。いま続けているお手入れのことも、肌以外の体調のことも、そのまま聞かせてください。横浜あざみ野のヒルズグレイスクリニックでは、残りの期間で何をどの順番で行うかを、診察で一緒に決めます。カウンセリングのご予約はこちら

本記事は、患者様からいただいたアンケートと診療記録をもとに構成しています。アイキャッチと本文中のイラストは、記事の場面を伝えるために制作したイメージで、ご本人のお姿を描いたものではありません。本記事では症例写真を使用しておらず、実名、施術日、具体的な施術の内訳など、個人を特定できる情報も掲載していません。治療結果や感じ方、経過には個人差があり、同じ変化を保証するものではありません。施術内容、費用、主な副作用・リスクは、必ず事前のカウンセリングとクリニック公式案内でご確認ください。

奥美香子 副院長

奥 美香子(おく みかこ)/ヒルズグレイスクリニック 副院長・形成外科医

年齢とともに起こる変化を、顔面解剖を基盤に、皮膚・脂肪・筋肉・骨格に起こる加齢変化として読み解き、顔全体のバランスから、その方に必要な治療を設計しています。目指すのは、見た目の変化をきっかけに気持ちが前を向き、日々の行動まで軽やかになるような、自然で調和のとれた変化です。診療では、顔の悩みだけを切り取らず、更年期前後に起こる女性ホルモンの変化や、肌・心・体の揺らぎにも目を向けます。40代以降は、肌をつくり支える細胞の働きが変化し、これまでと同じ治療でも十分な反応が得られないことがあります。だからこそ、まず肌が治療に応えられる状態を整える。この考え方を「CrossTALK® protocol」として体系化し、筆頭著者として2025年にJournal of Cosmetic Dermatologyに発表しました。2016年より、アラガン・エステティックス ジャパンファカルティーの一員として、また注入指導医として、医師への教育・指導にも携わっています。「美容医療は患者を幸せにするのか」という問いについては、大学との共同研究を通じて探究を続けています。必要な治療を、必要な順番で、必要な分だけ。年齢とともに変化する顔と人生に寄り添い、長く信頼して相談できる「美容のかかりつけ医」でありたいと考えています。詳しいプロフィール

RESEARCH NOTE

研究記事としての位置づけ

本記事は、「美容医療は人を幸せにするのか」という研究連載の一部です。患者様の個人的な感想を治療効果や安全性の根拠として一般化せず、研究における一つの語りとして紹介しています。

研究目的は、美容医療を受けた患者様が、外見の捉え方、気持ち、日常の行動をどのように語るのかを記述し、施術後の経験と主観的な幸福感の関係を考察することです。一人の患者様の経験だけから、一般的な治療効果や幸福度の変化を結論づけるものではありません。

本記事で用いた資料は、患者様からいただいたアンケートと診療記録です。発言は原本で確認できたもののみを匿名化して紹介し、意味を損なわない範囲で読みやすく整えています。比較対照は設けておらず、肌の状態の変化についての記述は、客観的な測定値ではなくご本人の主観的な評価です。

患者様の実名と施術日は記載せず、個人の特定につながる情報も掲載しません。本記事では症例写真を使用しておらず、同じ理由から、実際に受けられた施術の個別の機器名・回数・総額も記載していません。記事掲載への同意は確認しています。確認が完了していない情報は、公開原稿に追加しません。

Dr.Mikako

ヒルズグレイスクリニック副院長。注入治療のスペシャリスト。美容医療とウェルネスの融合で患者さまの幸せのサポートを使命としている。

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