院長 奥 謙太郎|2019年4月21日の講演記録(2026年10月20日に加筆・再構成)
この記事の要点
2019年、日本美容外科学会(JSAS2019)から依頼を受け、「色素性疾患・刺青にレーザー・光治療機器はどこまで有効か」というセッションでピコレーザーを担当して講演しました。Qスイッチルビーレーザー、IPL(光治療)、QスイッチレーザーでのLLLT(低出力レーザー治療)と並べて、それぞれの利点と課題を議論しました。私がお話ししたのは、ピコシュアの照射の組み立て方と、アジア人の肝斑に対するコンビネーション治療の考え方です。ピコレーザーでは、どの深さのシミにどのようなエネルギーで照射するか、どの照射方法を組み合わせるかが結果にかかわる、とお話ししました。

はじめに
シミには、どの機器が向いているのか。この問いに学会の場で正面から向き合ったのが、2019年の日本美容外科学会(JSAS2019)でのセッションでした。異なる機器を専門とする医師が同じ壇上に並び、それぞれの得意なことと、まだ改善が必要なことを率直に議論しました。この記事では、そのとき私が何を話し、どんな問題意識を持っていたのかを振り返ります。
1. 依頼を受けたセッション「色素性疾患・刺青にレーザー・光治療機器はどこまで有効か」
このセッションは、日本美容外科学会からの依頼でお引き受けしたものです。色素性疾患(シミなど、色素が原因で起こる肌の変化)と刺青に対して、レーザーや光治療機器がどこまで役に立つのかを、機器ごとに検証するという企画でした。
座長は、みやた形成外科・皮ふクリニックの宮田先生です。登壇者はそれぞれ異なる機器を担当し、利点だけでなく「どこを改善する必要があるか」まで含めて議論を交わしました。
- Qスイッチルビーレーザー:藤田保健衛生大学病院 准教授 秋田先生
- IPL(光治療、いわゆるフォト):あらおクリニック 荒尾先生
- QスイッチレーザーでのLLLT(低出力レーザー治療):KO CLINIC 黄先生
- ピコレーザー:私(当時のあざみ野ヒルズスキンクリニック、現 ヒルズグレイスクリニック)

2. ピコレーザーの登場で、シミ治療はどう変わったか
シミには様々な種類があり、その治療方法は機器の進歩とともに大きく様変わりしてきました。ピコレーザーが発表される前、講演当時から数えて5年ほど前までは、IPLや、カサブタをつくって治していくQスイッチレーザーを用いることが多かったのです。
ピコレーザーの登場で、シミ治療の選択肢が広がりました。ピコシュア(PicoSure)はその一つです。ピコシュアは755nmという波長を採用しており、シミの原因であるメラニン(肌の色をつくる色素)を、周りの血管や細胞を傷つけにくく壊すことを狙った設計でした。
この年の3月に参加したアメリカレーザー医学会(ASLMS)でも、ピコシュアの有効性に関する報告が数多くありました。

3. 結果を分けるのは「使い方」― 深さ・エネルギー・組み合わせ
ピコレーザーの難しいところは、その使い方にあります。「どの深さのシミに、どのようなエネルギーで照射するか」「どんな種類の照射方法を組み合わせるか」が、治療結果に直接かかわってきます。
正直なところ、施術者の技術力で結果に差が出やすいことも、ピコレーザーの特徴の一つだと私は考えていました。
そこでこの講演では、ピコレーザーの効果的な照射法と、私が推奨していた治療プログラムについてお話ししました。
4. 肝斑は「アジア人特有の疾患」として向き合う
肝斑は、両頬に左右対称の淡い褐色斑として現れるシミの一つです。物理的な刺激にとても弱く、肌の個性も一人ひとり違うため、治療も個々に合わせたテーラーメイドにする必要があります。内服などのインナーケアと同時に、肌そのものの治療を行うことが大切です。
当時、それまでの治療で思うような変化がなかったという肝斑のご相談を、当院では数多くいただいていました。
セッションでは、座長の宮田先生も「アジア人の肝斑」は特有の疾患であり、欧米人にみられる肝斑とはまったく異なると話されていました。3月のASLMSでもアジア人の肝斑について独立したセッションが設けられ、アジア諸国だけの肝斑学会も組織されていました。
様々な治療が行われていましたが、肝斑の治療法は当時はまだ確立されておらず、さらに研究を重ねる必要がありました。そのような状況のなかで、日本がリーダーシップをとって肝斑治療を体系化していく必要があると考え、私は臨床研究を続けていました。
5. 当時の肝斑治療プログラムと、横浜あざみ野での診療へのつながり
当院では数年にわたり、数機種のレーザーや導入機器、インナーケアで試行錯誤を繰り返してきました。当時行っていたのが、ピコシュアとデルマシオ(電気の力で薬剤を肌に届けるエレクトロポレーションという導入法)を組み合わせ、ホームケアの外用・内服を合わせるコンビネーション治療です。
講演で紹介したプログラムは、月に1回のピコシュア+デルマシオを4回行い、その後は月に2回のデルマシオと、内服・外用のホームケアで再発を抑えることを目指す組み立てでした。効果の出方や経過には個人差があり、肌の状態によって組み立ては変わります。
当時の私は、シミの種類と深さの見立てが結果を左右すると考えていました。肝斑については、肌の個性に合わせて治療とホームケアを組み合わせることを重視していました。一人ひとりの肌に合わせて治療を組み立てるという考え方は、横浜あざみ野での診療でも大切にしています。
よくある質問
ピコレーザーとQスイッチレーザーは何が違うのですか?
Qスイッチレーザーは、シミの部分をカサブタにする使い方が多く用いられていました。当時私が使用していたピコシュアは755nmの波長を採用していました。どちらが適しているかはシミの種類や深さで変わります。効果や経過には個人差があるため、診察で肌の状態を確認したうえで選択します。
肝斑にもレーザー治療はできますか?
肝斑は物理的な刺激にとても弱いため、強い刺激を与える治療は避ける必要があります。2019年の講演では、ピコシュアとデルマシオ(薬剤の導入)を組み合わせ、内服・外用のホームケアと合わせるコンビネーション治療をご紹介しました。肝斑は一人ひとり肌の個性が違うため、治療はテーラーメイドで考えます。効果の出方には個人差があり、まずは診察でほかのシミとの見極めを行います。
同じレーザーでも、シミ治療の結果に差が出るのはなぜですか?
ピコレーザーでは、どの深さのシミにどのようなエネルギーで照射するか、どの照射方法を組み合わせるかが、結果に直接かかわってきます。そのため、施術者の見立てと技術によって差が出やすい治療だと私は考えています。シミの種類が違えば適した照射の設計も変わります。肌の反応には個人差があるため、経過を見ながら調整することも大切です。
おわりに
2019年のJSAS2019では、ピコレーザーの照射法と、肝斑に対するコンビネーション治療の考え方をお話ししました。日本から肝斑治療を発信できるよう研究を続けたいという思いを胸に、その後も臨床と研究を続けてきました。
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