院長 奥 謙太郎|2019年8月1日の講演記録(2026年10月20日に加筆・再構成)
この記事の要点
2019年、熊本で開かれた日本美容皮膚科学会総会で、ランチョンセミナーと教育講演の2つを担当しました。ランチョンセミナーでは、ピコシュアが用いる755nmという波長について、それまでに報告されているシミへの効果と安全性を中心にお話ししました。教育講演では、同じ年に海外で講演した際にアジア各国の医師と意見を交わして見えてきた、ピコレーザーの使われ方と、日本で治療する際の注意点を共有しました。数千例の照射を経て私が実感していたのは、レーザーの原理と疾患の理解という土台の大切さです。

はじめに
同じピコレーザーでも、国が変われば使い方の工夫も変わります。2019年の私は、海外の学会で各国の医師と議論する機会が続き、そのたびに新しい発見がありました。その夏、熊本の総会で2つの講演を任され、そこで得たものを日本の先生方と共有することにしました。
1. 台風が心配された日、熊本へ ― 2つの講演を任された総会
毎年夏に開かれる日本美容皮膚科学会総会。2019年は熊本での開催でした。私はランチョンセミナー(昼食時間に行われる講演)と教育講演(学会が学びの場として企画する講演)のご依頼をいただきました。
テーマは、ピコセコンドレーザー(ピコレーザー)をめぐる世界的な潮流と、シミや肝斑(頬などに広がりやすい、もやもやとしたシミ)を含めた全顔のリジュビネーション(肌の若返り)です。
出発前は台風が心配されましたが、離陸する頃には雨も上がりました。熊本は快晴で、到着後すぐに熊本城の目の前にある会場へ向かいました。

2. ランチョンセミナー「ピコレーザーができること」― 755nmとシミ
1つ目のランチョンセミナーは、ピコレーザーのシミに対する効果と安全性がテーマでした。ピコレーザーには多くの機種があり、それぞれに特徴があります。私が使っているピコシュアは、シミの治療に有利な755nm(ナノメートル。光の波長を表す単位)という波長を用いています。
755nmは、シミの原因であるメラニン(肌の色をつくる色素)の周りにある血管や細胞を傷つけにくく、メラニンを効率よく壊すことが期待できる波長です。そのため、カサブタを作らずにシミの治療を進められる可能性があります。
このセッションでは、それまでに報告されている755nmの効果と安全性を中心にお話ししました。治療の反応や経過には個人差があります。
3. フラクショナル照射で、シミだけでなく肌全体に働きかける
ランチョンセミナーでは、フラクショナル照射(光を細かい点状に分けて当てる方法)を追加する考え方もお伝えしました。肌全体の状態に働きかけるための照射です。
フラクショナル照射によって肌のターンオーバー(肌の生まれ変わり)を促し、真皮(肌の奥の層)のコラーゲンやエラスチン(肌の弾力を支える線維)、ヒアルロン酸を増やすことで、ハリとツヤのある肌に近づけることが期待できます。
ピコフラクショナルは、肌の表面への負担を抑えながら真皮にエネルギーを届けることをねらう方法で、ダウンタイム(治療後の回復期間)は少ないとお話ししました。
講演では、フラクショナル照射を取り入れることで期待できる変化として、次のようなお悩みを挙げました。いずれも個人差があります。
- 目元にハリを持たせ、小じわを目立たなくすること
- 毛穴を目立たなくすること
- ニキビへのアプローチ
4. 教育講演「ピコレーザーの可能性」― アジアの医師から学んだこと
休む間もなく、次は教育講演です。この年は、3月のASLMS(アメリカレーザー医学会)、5月のAPAC forum(マカオ)と、海外での講演が続きました。そこでご一緒した各国の医師と意見を交換することで、多くの新しい発見がありました。
特に、私たち日本人と似た肌質を持つアジアの患者様を診ている医師の治療法には、学ぶことが多くありました。その一方で、日本で治療を行う際には注意しなくてはいけない点も見えてきました。
そこで教育講演では、アジア諸国でピコレーザーがどのように使われ、どのような工夫がなされているのか、そして治療を行ううえで何に気をつけるべきかをお話ししました。同じセッションでは、宮田先生、根岸先生、真弓先生とご一緒しました。
5. 使い始めて3年、数千例を経て感じた「土台」の大切さ
ピコレーザーを使い始めて3年。私が照射した症例は数千例にのぼっていました。それでも、ピコレーザーを深く知るほど、レーザーの原理や疾患の理解といった、治療の土台がいかに重要かを実感していました。
実際の治療でどのような結果を出せるのか。さらに改良するためには何が必要なのか。当時のあざみ野ヒルズスキンクリニック(現 ヒルズグレイスクリニック)で、私はその問いについて考察を続けていました。
アジアの医師から学んだ工夫も、日本で治療を行う際の注意点とあわせて考える。そのうえで照射を組み立てることを、横浜あざみ野での診療でも大切にしています。
よくある質問
ピコシュアの755nmという波長にはどのような特徴がありますか?
755nmは、シミの原因であるメラニンを効率よく壊すことが期待できる波長です。2019年の講演では、メラニンの周りにある血管や細胞を傷つけにくく、カサブタを作らずにシミの治療を進められる可能性があることをお話ししました。ただし、反応や経過には個人差があり、シミの種類によって適した治療も異なります。
ピコフラクショナルにはどのような特徴がありますか?
光を細かい点状に分けて当てるフラクショナル照射を、ピコシュアで行う方法です。肌の表面への負担を抑えながら、肌の奥の真皮にエネルギーを届けることをねらいます。講演では、ダウンタイムは少ないとお話しし、目元の小じわや毛穴、ニキビへのアプローチとしてご紹介しました。効果やダウンタイムには個人差があります。
日本人の肌にピコレーザーを使うとき、気をつけることはありますか?
2019年の教育講演では、日本人と似た肌質を持つアジアの医師の治療法から学ぶ点が多い一方で、日本で治療を行う際に注意すべき点もある、とお話ししました。肌質やシミの種類によって照射の考え方は変わります。治療前に診察で肌の状態を確認し、起こりうる反応やリスクをご説明したうえで方針を決めています。
おわりに
熊本での2つの講演は、ピコレーザーの理論と、海外で得た学びを日本の診療にどう生かすかを整理する機会になりました。シミや肝斑、肌質のお悩みについては、診察で肌の状態を確認したうえで、一人ひとりに合った治療の組み立てをご提案します。
シミ・たるみ・肌質のお悩みは、横浜あざみ野のヒルズグレイスクリニックまでご相談ください。診察のうえで、一人ひとりに合った治療の組み立てをご提案します。カウンセリングのご予約はこちら →







