世界最大の美容医療学会であるAMWC。今回日本で行われたAMWC JAPANに演者・座長として、美香子先生と共に参加させていただきました。
今年のAMWC JAPANは国際学会シーズンと重なっていたため、先々週のバンコク、先週の韓国に引き続き3週連続でなじみのメンバーが集合しました。日本で彼らと会うことが出来るのはまた嬉しいものです。
さて、今回特筆すべきミッションは美香子先生が演者を任されているセッションでの座長に任命されていること。私は皮膚科医、美香子先生は形成外科医ですが、専門分野の異なる二人が「美容医療と幸福度」という一つのテーマについて議論するセッションで、夫婦一緒にセッションすることになったのはキャリア初です。
今回はまずそこからお話ししましょう。
1:美容医療と幸福度の関係
美容医療は幸福度に寄与するのか、という大きな命題に対して、世界的に見ても現在までに客観的なデータはありませんでした。
詳細は美香子先生のインスタ (こちら) をご覧いただくこととして、このセッションの座長として感じたことを。
実は美容医療が受け手の幸福度とどう関係するかは、美容医療の先駆者である古山登隆先生が精神科のDrと共同研究を行ったことがあるそうなのですが、「残念ながら有意な差は得られなかった」とを共有してくださいました。美容医療が発展し、社会に受け入れられてきたことも関係していると思いますが、今回の美香子先生のデータからは、美容医療治療と幸福度の明らかな相関がみられました。会場で講演をお聞きくださった古山先生からも「こういったポジティブなデータが得られるようになったことは大きな意味を持つ」とお話しを頂きましたが、まさに美容医療における新たな夜明けだと感じます。
美容医療は「見た目」の改善にとどまらず、「人生の幸福度」に貢献できる。
これほど私達美容医療従事者を幸せにすることはないのではないでしょうか。
当院では成蹊大学社会学の小林盾教授とともに、この幸福度の研究を継続しその結果を皆さんに共有できる形にする予定となっていますので、新たな発見がありましたらすぐに報告させていただこうと思います。
2:ピコシュアプロの効果を最大限に引き出す方法
ピコシュアプロが日本で正式にデビューしたのは2023年ですが、当院は世界で最初のピコシュアプロ導入施設として2021年から使用を開始しています。ピコシュアならびにピコシュアプロの臨床データ、基礎医学データを基に最も肌に負担をかけない、かつ治療成績が高い照射方法を構築してきましたが、シミ・アザ治療に関しては現在のところ、ピコシュアプロに比肩するレーザーは見当たりません。
今回、臨床経験からの学びをシェアしてほしいという依頼を受けて講演させていただきました。
レーザーは精密医療機器であり、性能が高いことは前提条件です。その性能は何に由来するものなのか、を分かったうえで照射方法を構築するのが重要です。
レーザーはシミを破壊するものなので「エネルギーが強ければ強いほどよい」というように考えがちですが、これはあまりに短絡的です。シミ・アザ治療のターゲットとなるメラニンには「このくらいのエネルギーがぶつかってくると壊れる」というポイント(閾値と言います)があります。強いエネルギーをぶつけて壊す、だけであればピコレーザーを使用する必要もなく炭酸ガスレーザーで蒸発させてしまえば同じ結果が得られます。
「メラニンは壊すけれど、その周りには影響を与えない」これがシミ・アザ治療の極意になりますが、現在のところ表皮・真皮ともにこの方法ができることが基礎医学からも実証されているのはピコシュアプロのみです。
さらにピコシュアプロは、壊したメラニンの周りの細胞活性を高くすることができるため、シミ・アザ治療と同時に肌質改善治療を行うことができます。
「強いエネルギーを当てて壊せばよい」という治療=ダウンタイムや副作用は出る前提で行う治療となるのですが、当院では、「閾値周囲のエネルギーで効率よくメラニンを破壊しつつ、周囲の肌再生の促進を行う」治療=ダウンタイムや副反応は最小限の治療を行っています。このため治療当日から日常生活に支障なくお過ごしいただくことができ、従来の治療にくらべて治療効果が高いだけでなく、色素沈着の発生率も非常に低くなっています。当院におけるピコシュアプロ治療の色素沈着の発生率は2.56%であり、世界的に見ても最低発生率であることが示されています。
多くの国際学会でPICOSUREproについての講演依頼をお受けしますが、この「効果と副反応のバランスのとり方」に非常に高い興味を持っていただいているから、が理由の一つです。
今回のAMWC JAPANでは美香子先生のセッションでの座長、ピコシュアプロの長期臨床成績のまとめ、といったこれまでのキャリアの総括を行うかのような講演をさせていただく場をいただいたと思っています。
美容は「医療の一分野」、つまり外科や内科と同じカテゴリーの一つであり、我々医療従事者は患者さんのメリットと安全性を最大にするよう治療を構築する義務があります。流行を追うのではなく、本当に必要な治療を、最大の効果で提供できるよう、これからも臨床、研究、教育を行っていきたいと思っています。